展示レポート
古川ゆめの 個展「古川ゆめの 作品展」
2018年3月に開催された、古川ゆめの 氏の個展「古川ゆめの 作品展」のレポートです。
古川氏は1988年、東京都生まれ。2013年に多摩美術大学卒業、2015年に多摩美術大学大学院を卒業しています。2008年頃から展示活動を多数行い、本展は初の個展になります。
古川氏は日々の生活の中で感じた様々な心情を表現しており、これらを視覚化した版画・絵画作品が展示されます。
展示のようす
▲広場を回るように駆け巡る子どもたち。夢の中を覗くような、星空に映った姿を眺めているような、そんな不思議な雰囲気に魅了されます。
古川氏は小学校教師として務めており、作品も子どもをモチーフとしたものが多くあります。制作はひとりで黙々と行うものであり、元気に動き回る子どもたちからパワーをもらっていると話します。
▲大人に満たない、ということは時に多くの不自由をもたらします。子どもであることを強いられ、世界の真の姿から遠ざけられてしまう。
そんな中、身を護るように縮こまってみたり、あえて飄々と振る舞ってみたり、世界の裏側を見るように逆立ちして反抗してみたり……。様々な振る舞いを見せる子どもたちが描かれているようです。
▲うちわにアクリル絵の具で描いた作品。版画とは対照的なサイケデリックな色合いです。胸の内側から染み出してくるような、ぼんやりとした不思議な形状。うちわという限られた領域を通して、心象世界を覗いているような感覚に陥ります。
▲幼子が夢見るおとぎ話のような、静謐とした美しい情景。幽かな寂しさを感じてしまうのは、淡いブルーに染められているせいでしょうか。
成長するにつれ薄れてしまう、知っていたはずの世界。しかしもしかすると、今も心の片隅に淡く残り続けているのではないか。そんなことを想像させる作品です。
▲ギャラリーの外はガラス張りになっており、道に面した展示スペースになっています。今回は3点の作品が展示されました。
子どもたちの振る舞いはときに想像を越えるものであり、大人の理屈で全てを理解することはできません。どんなものでも楽しい遊びに変えてしまう想像力、時に気まぐれのようにも目に映る、素直で真っ直ぐな感性。
これらは大人になるにつれて薄れてしまう、自分の中だけ在る世界と向き合っているからこそ、持てるものなのではないでしょうか。古川氏の作品は、そんなかつて知っていた世界を思い出させてくれるようで、不思議な懐かしさを感じます。
淡いぼんやりとした世界観、ふわふわと風になびくような人々。国や人種さえ超えて、誰もが幼い頃に思い描いていた幻想的な領域に足を踏み入れるような、素晴らしい展示でした。
展示情報
展示名:古川ゆめの 作品展
作家:古川ゆめの|Facebook
期間:2018年3月20日(火)~4月1日(日)
展示場所:space2*3(Interart7|Web・Facebook)
所在地:東京都中央区日本橋本町1-7-9