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展示レポート

常見一奈 個展 | 神の子サーカス

2017年10月に開催された、人形作家・常見一奈 氏の個展です。展示テーマは「サーカス」。通常の球体関節人形とは一線を画すような、非常に独創性があり、奇抜な人形たちが並びます。DMに掲載されている作品を含め、計3体の新作が出展されます。

氏は10年ほど前から人形制作をはじめ、今回の展示は4年ぶり、2回目となります。人形は石塑粘土(セキソネンド)、液体粘土などによって製作され、彩色は油彩で行われています。いずれも独学で、ほとんどの人形は型を作らずに一から造形されています。

人形制作の際にはモデルとなる精巧な絵画が描かれます。それに近づけるように作っていくため、絵を元に骨組みが作られた時点で人形の完成形が大きく決定するそうです。

展示のようす

「魔女(仮)」

 

目を閉じた表情は、この人形で初めて制作されました。
体内にはオルゴールが埋め込まれており、胸のハート型のつまみを回すことで音楽が奏でられます。

「柔らかく優しい黄金の希望」(手前)

 

「時夜」

 

「空 -kuu-」

ほっそりとした大人びた顔つきや人形らしい丸顔など、
作る時期によって顔の印象も変化するそうです。

「空 -kuu-」

緑色の鮮やかな球体が目を引くこちらの作品は、枝豆をモチーフとしています。
タイトルの「空(くう)」は、「空白」と「食う」をイメージしており、
3.11(東日本大震災 2011年3月11日)をきっかけにテーマが選定されました。

本展示で発表された新作品です。

「とろける魂」

本展示で発表された新作品です。

「王様」

唇の間から覗く歯は、絵ではなく一本一本緻密に造形されています。
近くで見ると、今にも喋りだしそうなほどリアルに作られていることが分かります。

「キリン子」(左)、「チビ子」(右)

 

「白狼」

 

「烏賊」

本展示で発表された新作品です。
ぬめり化を帯びていそうな質感は、油彩によって見事に表現されています。

人形作品の設計図となる絵画です。
陰影、関節など細部まで描き込まれており、人形が紙面に沈み込んだようなリアルさがあります。

鑑賞後記

ギャラリーの前に立った瞬間、展示空間から匂い立つ不思議で怪しげな空気に包まれるような感覚を得ました。一歩足を踏み入れると、そこは都会から遠く離れた、夢と現世があいまいに重なり合うサーカス場のよう。並ぶ人形たちはどれも、西洋のおとぎ話を思わせる出で立ちで、まるで絵本の中から迷い出てしまったようです。その独特な雰囲気には幼いころの記憶を刺激されるようで、不思議な親しみを抱かずにはいられません。

また通常の球体関節人形とは一線を画すような奇抜な造形の作品からは、まるで異世界に向かって手を引かれるような強烈な存在感を覚えました。食物を意識し大胆に組み込まれた形状や、金属的な表現は珍しく、
氏の人形に対する自由なとらえ方と、素晴らしい想像力によってもたらされるものに違いありません。

造形のみならず彩色も非常に凝っていて、様々な素材を忠実に再現する技術には舌を巻きます。特に新作の「烏賊」などは、本物と見まがうような質感があり、冷感さえ伝わってきそうなほどでした。

人形とは本来子供向けの玩具である。という意識を元に、胴体を布で制作した作品もあります。触らせて頂いたところ思いのほか軽量で、そのやわらかな触り心地に、粘土とは異なる温かさを感じました。

動物など玩具のような作品が見られることから、氏の作品制作の原点には子供という意識が少なからずあるのではと思います。一見すると奇抜で異形の存在のように目に映る人形たち。それにも関わらず、得も言われぬ親しみや懐かしさを感じるのは、氏が独学で磨いてきた高い技術と共に、あたたかな想いが込められている為かもしれません。

氏は3度目になる次の個展は、再来年を考えているそうです。次回はどのようなテーマで異世界へ連れて行ってくれるのか。今から楽しみでなりません。

展示情報

展示名:神の子サーカス
作家:常見一奈(ツネミカズナ)(ブログツイッター
期間:2017年10月6日(金)~10月8日(日)

展示場所:自由帳ギャラリー(杉並区)
最寄り駅:高円寺駅
所在地:東京都杉並区高円寺北2丁目18−11