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展示レポート

鴻池朋子 個展|Little fur anger

2018年3~4月に開催された、鴻池朋子 氏の個展「Little fur anger」のレポートです。

鴻池氏は1960年秋田県生まれ。1985年に東京藝術大学を卒業し、90年代から数多くの展示活動を行っています。1998年より「現代の神話」をテーマに、絵画・彫刻・アニメーション・絵本など多岐にわたる表現を行っています。

本展では銅版画と板彫刻、それぞれの新作が発表されます。銅版画作品は、鴻池氏が昨年担当した朝日新聞朝刊の挿絵より作家本人が選出し、新たに刷った物です。板彫刻は、2年前に鴻池氏が初めて木版画を彫った時に感じた魅力、興奮の記憶を元につくられた作品です。

展示のようす

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▲胸をすくような鮮やかな青。荒々しい気性を感じさせる爪、温かさそうな毛並みが細密な線彫りによって見事に表現されています。鴻池氏は「木版を刃物で深く掘ることで、木の内部から新たな光が現れる」と語ります。

一心に食らいつく表情は産み落とされたばかりの赤子のようにも、懸命に生き抜く老成した姿のようにも見えます。彫刻作品に関しては視覚障害者の方も触って鑑賞することができます。

▲新たな刷り師と試行錯誤の末に生まれた銅版画作品。フワフワとした、今にも風に揺らめきそうな独特の質感。これは黒と青の2色を同じ板で2回刷ることで生じた、微細なズレによって表現されたものです。昆虫や動物たちの胸の奥から、幽かな鼓動が伝わってくるようです。

▲展示タイトル「Little fur anger」は「小さな毛皮の怒り」を意味します。自然の力に翻弄されながら、それでもしぶとく、時にしたたかに生きる。もしくは、この世に生を受ける際の根源的な感情。そんな力強さを感じさせる作品です。

銅版画の独特な質感、板彫刻の鮮烈な色彩・彫り。絵本のような温かみのあるタッチながら、平面という限られた領域の中に生き物たちの息吹を感じるような作品たち。

単に形を刻まれているのではなく、世界の片隅でいまを生きている者の姿を映しているような、あるいは絵画に産み落とされた生命が産声をあげるような、そんな体温を感じずにはいられない印象深い展示でした。

展示情報

展示名:Little fur anger
作家:鴻池朋子(コウノイケトモコ)|Official WebTwitterFacebook
期間:2018年3月7日(水)~4月15日(日)12:00~19:00(最終日:17時まで)月曜・火曜休廊

展示場所:Gallery KIDO Press(東京都千代田区)
最寄り駅:東京メトロ銀座線 末広町
所在地:東京都 千代田区 外神田 6-11-14 千代田アーツ3331 – 204

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