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展示レポート

黒田阿未 個展「夜」

2018年3月に開催された、黒田阿未 氏の個展「」のレポートです。

黒田氏は1991年、富山県生まれ。2013年に東北生活文化大学を卒業し、同年から展示活動を数多く行っています。初個展は2013年で、今回は2年ぶり5回目の個展になります。

自らの精神を投影したセーラー服の少女。東京辺りでは珍しい「紙版画」という技法で描かれた作品が展示されます。

展示のようす

「少女のそばえ」

▲セーラー服をまとう思春期の少女たち。年齢は中学~高校生くらいがイメージされており、作家自身がその頃に抱いていた複雑な思いが投影されています。

「ゆらぎの少女」

▲紙版画という技法が見せる独特のやわらかな色彩、しっとりと空間を濡らす繊細なグラデーション。黒田氏は銅版画やシルクスクリーンなど、版画技法を一通り巡り紙版画に行き着きました。

東京近辺ではあまり見かけない技法ですが、仙台の美大生など東北地方では行っている方がいるそうです。銅版画よりやわらかな印象になることが特徴です。

「青く揺らいでいた」

▲深い水の中をたゆたい、じんわりと染み出してくるような青。黒田氏は富山県出身で幼少期から海に馴染みがあり、それゆえ青を用いた作品を多く制作しています。少女たちと折り重なるクラゲの姿が、手の届かない心象的な世界を表現しているようです。

「青く揺らいでいた」

▲開きかけた口元、遠くを見つめるようなさみしげな視線。憂いを含むような表情は、言葉に表しがたい複雑な感情を思わせるようです。

「箱の中の星Ⅰ」

 

「置き去りの月」

 

▲会場では作品集、カレンダー、版画を用いた封筒などが販売されていました。

幼子とも大人とも違う、思春期という限られた時期。それは自らと深く向き合う最初の期間であり、それと共に社会での立ち位置を決定してしまう、外の視線に気づく頃でもあると思います。

成長するにつれて意識せざるを得ない他者の存在。否応なく当てはめられるレッテル。透明な層を隔てて、水の中からこちら側の世界を俯瞰するような少女たちは、深海という孤独の中にうずくまるようであり、水流に抗おうともがくようでもあります。

そんな揺れ動く気持ちを独特の色彩で表現する、静謐とした美しい展示空間でした。

展示情報

展示名:夜
作家:黒田阿未(クロダアミ)|Official WebInstagramTwitter
期間:2018年3月27日(火)~4月1日(日)

展示場所:The Artcomplex Center of Tokyo(新宿区大京町)|Official WebFacebookTwitterInstagram
所在地:東京都新宿区大京町12 – 9

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