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展示レポート

水島理江 個展|emotions

展示のようす

解説・鑑賞後記

2017年11月に開催された、水島理江 氏の絵画展「emotions」です。氏は女子美術大学を卒業し、現在は油彩を中心に制作を行っています。人間の不安や恐怖、嘲笑するような気持ちなど、負の感情を表現しています。本展示では暗い作品が目立ちますが、キルティングや版画などを用いて植物や花などを描いた、明るい世界観の作品も制作しています。在学中から、表現技法にこだわらず様々な形で制作活動を行っており、当時からネガティブな感情なども題材にしていたと話します。

氏が長いあいだ興味をいだき、向き合ってきた人間の負の感情。それらを本展の作品のように、独特な肖像という形で描き始めたのは2017年に入ってからのことです。氏は11月11日~12日にかけて開催された、デザインフェスタ vol.46でも展示を行っており、今回の作風で展示が行われるのは2度めになります。

会場に並ぶ約20点の作品たちは、全て髪も耳のない裸の人々が描かれています。その異様な光景は扉の外からも目を引くようで、画廊前を通りかかる人々が次々と視線を向けていました。

沼のような黒い背景にたたずむ年齢や性別さえ不詳な人物。正面を見つめているにも関わらずどこか頼りなげなその視線は、揺れ動く感情を内に秘めているようなリアリティがあります。

心のなかに浮かぶもう一人の自分を見ているような、現実にありそうでない不思議なたたずまい。一見するとどの顔も似ているようですが、肌の色や口元の歪み、微妙な影の表現など一人一人が個性的に描かれています。

髪・耳・まつ毛・眉毛など、顔のパーツを限界まで削ぎ落とし、あえてメリハリを欠いたようなのっぺりとした顔。これは全て、感情を直に表現するための手法だと氏は話します。描かれる人物たちは皆、負の感情を抱えています。氏が個人的に抱く将来への不安や、ニュースを見て湧き上がった感情が生々しく表現されているのです。

繊細で時に激しい気持ちの揺れ。これを直にキャンバスに出力するために、先入観をもたらすような要素(性別など)を限界まで排除し、限られたパーツだけで顔を描いています。1枚の製作時間は2時間ほどで、スピーディーに仕上げるのも、その時の気持ちをより鮮明に描き写すためです。

顔のパーツを記号化し、誇張して描くようなマンガ的な表現とは対称的な、静かで淡々とした印象をもたらす作風は、無駄な装飾をせずにリアリティを追求した作家ならではのものだと感じました。

数点、笑顔を見せている作品がありますが、彼らが抱いているのは喜びではありません。よくよく見ると、どこか高みから見下ろすような挑発的で不穏な匂いを感じるように、ゴシップを見てニヤついたり、指を差してあざ笑うような、そんな卑しい笑みなのです。

心の内で煮えるような負の感情は、できる限り触れずに避けていたいものです。しかしそう思えば思うほど、感動や喜びといったポジティブな感情よりも、興味を抱かずにはいられないものでもあります。

氏はネガティブな感情に臆さず、向き合い続けたからこそ今回の展示に辿り着いたのではないでしょうか。負の感情は時に、想像もつかないような作品を生み出す原動力になります。

ネガティブに惹かれ興味をいだいてしまうのは、こんな知らない世界が広がっていることを、心の片隅で信じているからなのかもしれません。

展示情報

展示名:emotions
作家:水島理江(ミズシマリエ) |インスタグラム
期間:2017年11月17日(金)~11月22日(水)

展示場所:新宿眼科画廊(新宿区)
最寄り駅:東新宿
所在地:東京都新宿区新宿5-18-11