展示レポート
宮本承司・三好愛 2人展|もくろみ日和
2018年3月に開催された、宮本承司 氏と三好愛 氏の2人展「もくろみ日和」のレポートです。
宮本承司氏は1988年大阪府生まれ。2010年に大阪芸術大学を卒業し、同時期から多数展示活動を行っています。お寿司やフルーツなど身近なものをモチーフに、透明感のある木版画で、独自にデフォルメされた姿で表現しています。
三好愛氏は1986年東京都生まれ。2006年頃から展示活動を始め、2011年に東京藝術大学大学院を修了しています。日常にひそむ行き場のない感情を、シンプルな表現を用いて作品制作を行っています。
展示タイトル「もくろみ日和」は、両氏が共通して持っている「いたずらっぽい軽快な毒」というイメージから生まれました。それぞれがよく使うモチーフを逆転した作品など、新作約20点が展示されました。
展示のようす
▲水面を覗いているような奥行きのある透明感。独自にデフォルメされた温もりのある造形は、モダンなイラストレーションを彷彿とさせます。鮮やかな背景は、水中のようにも空のようにも見えます。
何者かの意思によってそこに置かれた、というよりはお寿司が自らの意思でそこに存在している。という方がしっくりくるような、面白げな雰囲気があります。
▲ひょうたん型のトゲトゲにダイブする人。彼の顔にもまたトゲトゲが。
まだまだやらなくちゃいけないことがあるけれど、もういいや寝ちゃおう! そう吹っ切れながら、現実を全て投げ出して布団を被ってしまう。後にどんな事態が待ち受けているかも知らずに……。そんな先をかえりみない投げやりの気持ちを感じてしまいます。
▲薄暗く空を染める雲、あるいはタバコの煙のような不穏なもくもく。居場所を求めて彷徨う男女の姿のようにも、後を追う男性と振り切ろうとする女性の追いかけっこのようにも見えます。
様々な想像をかき立てる作品ですが、もくもくを介して繋がっている彼らは、お互いのことを意識せずにはいられない。そんな不器用な人々を描いているようでもあります。
木版画という伝統的な技法からは想像がつかないモチーフ、新鮮さを感じさせる色合い。水性木版の特徴的な風合いによって、水気をともなう食品や体温を持った生き物が、今まで知ることのなかった活き活きとした姿で描かれているようでした。
空虚なまでにデフォルメされた三好氏の作品。かわいらしい絵本のようなタッチながら、平面的でシュールな造形。もやもやとした奇妙さが漂ってくるようで、ユーモアと共にどこか風刺的な意味が込められているようでした。モチーフの間の空白、大胆な余白が様々な想像を運んでくるような作品でした。
展示情報
展示名:もくろみ日和
作家:
宮本承司(ミヤモトショウジ)|Facebook・ギャラリーアーティストページ
三好愛(ミヨシアイ)|Official Web・Facebook・Twitter・Instagram・ギャラリーアーティストページ
期間:2018年3月7日(水)~3月24日(土)
展示場所:MORITAKA(千代田区)
最寄り駅:東京メトロ銀座線 末広町
所在地:東京都千代田区外神田6丁目11−14 アーツ千代田3331内 205a