展示レポート
中村ちとせ 銅版画展
2018年10月にギャラリー オル・テール開催された、銅版画作家・中村ちとせ 氏の展示レポートです。
中村氏は1982年 京都のインターナショナル美術専門学校を卒業。1986年に大阪の番画廊で初個展を行い、以降 兵庫・奈良・京都など日本各地で展示を開催しています。
展示のようす
▲「Tres Companero」
時の経過を感じさせるような独特な色使い。砂のような質感と人物たち不思議な佇まいが、エキゾチックな香りを漂わせるようです。
広大な乾いた大地、民族的な風習が残る地に溶け込むような魅力を放つ作品です。
▲「お椀ダンス」
コミカルな動きと、お椀の周りを漂う飛沫のような表現から、楽しげなリズムが耳に届くかのようです。
中村氏は現在の淡いエキゾチックな作風は、ここ10年ほどのものであると語っています。それ以前は鮮やかな色を用いていたり、線がはっきりした作品を制作していました。
しかしその時々で趣味嗜好が変わるため、合わせて作品も変化していくそうです。
▲「Fezのメルカードで」
ぴったりと閉じられたくちばしとは対象的に、こちらをじっと見つめるような視線が印象的です。
▲「二人は仲良し」
独自の風合いを持ったキャラクターや衣装などは、一人旅をするなかで出会った人々や書物など、様々なものから影響を受けています。
▲登場するキャラクターには、ほとんど目が描かれていません。顔をはっきりと描いてしまうと、表情に印象が固定されてしまうからです。
かつては目のある作品も多かったようですが、今は少なく、描いたとしても感情を伺わせない目になったそうです。
▲「漂流船」
どこか遠い国に誘われるような、物語の始まりを感じさせる作品です。
作品にはストーリー性を有した物もありますが、すべては絵ありきです。絵画を制作した後にタイトルが決められ、物語が生まれてくるのです。
▲「Cuatro casa Ⅱ」
タイトルはスペイン語で「4つの家」を意味します。中村氏は世界中を旅しながら沢山の写真を撮ると話します。
そうして記憶に残った様々な風景から、懐かしさを刺激されるような美しい作品のインスピレーションが産まれるのかもしれません。
▲小さい作品に関しては、額も中村氏が制作しています。白木を用いていますが、絵の雰囲気に沿うように自ら塗装も行っています。
▲会場の一角にはアクセサリーが展示されていました。想像をかきたてるような文様が温かみのある光沢を放ちます。
▲会場奥の小展示室の様子です。小品を中心に、かわいらしい雰囲気の作品が並べられていました。
中村氏は現在、兵庫県で銅版画教室「ちとせ工房」を運営しています。大阪では毎年新作展を開催しており、個展回数は100近くに上るそうです。
24歳の時にニューヨークへ行って以降、東南アジア・インド・アフリカなど世界中を旅しており、近年はヨーロッパなども訪れています。
版画技法によって生み出された荒々しい乾いた質感。国境を感じさせないキャラクター・風景――。
ぬくもりに満ち、どこか安堵感をもたらしてくれるような不思議な作品たちには、世界中を行くなかで湧き上がった様々な想いが込められているのかもしれません。
書籍「絵本・旅で見つけた素敵なできごと 旅のおくりもの」
2019年1月に発売された電子書籍です。
『旅のおくりもの』は銅版画作家でもある中村ちとせさんの絵本です。
作者はこれまで世界のさまざまな国々を旅されてきて、そこで出会い感じてきたできごとを、この絵本のなかで、独自な作家の画風により楽し
く不思議な動物やキャラクターが登場する、世界感を持った素敵な絵本が完成しました。
是非、子供から大人の方にも読んでもらいたい絵本です。さあ、この絵本を読んで旅の話しで盛り上がってください。引用:Amazon
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展示情報
展示名:中村ちとせ 銅版画展
作家:Web・Shop・Facebook
期間:2018年10月18日~10月27日 ※木・金・土のみ
展示場所:ギャラリー オル・テール
所在地:東京都中央区京橋1-6-10 ミカタビル地下1階