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展示レポート

根橋洋一 個展 | 八方美人

展示のようす

「黄金の椅子」

 

「魔湖」

 

「余韻」

 

「双の目」

 

「黒の花嫁」

 

「Guidelines」

 

「乙女の心音」

 

「Playing games」

 

「目覚め」

 

解説・鑑賞後記

2017年10月に開催された、画家・根橋洋一 氏の個展「八方美人」です。氏は活動を開始した初期の頃から、鮮やかな色彩の中に埋もれる少女たちを描き続けています。

97年に東京で初個展を開催し、以降グループ展など様々な場で作品を発表しています。みうらじろうギャラリーでの個展は4年ぶりとなり、約20点の作品が並びます。そのうち3分の1ほどは、近年制作点数が増えている緻密な鉛筆画になります。

あまりに独特な、まるでそれ自体が光を放っているように、目の前に迫る色の洪水。その中であられもなく四肢を投げ出す、いたいけな少女たち。彼女たちは灰色の作り物のような肌をしている一方、宝石のような熱のこもった視線を向けています。

ふくよかな体つきは大人びていて、繊細な陰影表現によるメレンゲのような柔らかな質感は、思わず触れてしまいたくなるほど。少女たちを包む、褥のように敷き詰められた花は、頭をくらくらとさせるような甘い匂いを放つよう。

空白を恐れるかのように、動植物をモチーフとした様々な模様で埋め尽くされる背景。一つの作品であることを忘れさせるような、異様なほど平面的な描写には吸い寄せられるような素晴らしい魅力があります。

幼さと成熟、立体と平面、現実と非現実などあらゆる対極的な姿が同居しているような不可思議な作風は、氏の「嘘で塗り固めたい」という意識から生まれた意図的なものです。

遠近感をなくしコラージュのように描くことによって、ある種のチープ感が生まれます。少女たちの肌が灰色気味に染められているのも、作り物らしさを表現するためです。ゆえに氏は、生身の人間ではなく人形を書いている感覚だと話します。

鑑賞者に鮮烈に訴える特徴的な色彩は、個展を行った当初から用いられており、氏が工夫を凝らして編み出したものです。しかしこれらがもたらす匂い立つような官能的な魅力は、モノクロームの鉛筆画においても一切褪せることはありません。

灰色に着色されていないぶん、きめ細やかな肌は体温さえ感じるようで、洗練された高度な技術と果てしない情熱が込められているようです。細密に描かれたあらゆるモチーフが違和感なく少女たちを囲む様子は、氏の他には誰にも再現できないであろう圧倒的な世界観があります。

目を覆いたくなるような、それでいて覗いてしまわずにはいられない、少女たちの囁きが響き渡るような恍惚とした世界。あられもなく横たわる肢体、さらけ出された乳房、無垢な視線に心を奪われ、官能に支配される果てに、心地よい脱力感とめまいに襲われるような、素晴らしい展示でした。

下記は会場で販売されていた画集「秘蜜の少女図鑑」です。2013年に刊行され、みうらじろうギャラリーでは出版記念展が開かれました。2000年以降の作品が掲載されています。

参考:トーキングヘッズ叢書 No.55 黒と白の輪舞曲 モノクロ世界の愉悦

展示情報

展示名:八方美人
作家:根橋洋一(ネバシヨウイチ)| ブログツイッターフェイスブック
期間:2017年10月21日(土)~11月5日(日)

展示場所:みうらじろうギャラリー
最寄り駅:小伝馬町
所在地:東京都中央区日本橋大伝馬町2-5