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展示レポート

坂ノ咲由平 個展 | One Of Many

2017年9月に開催された、坂ノ咲由平 氏の個展です。氏は1992年、大阪府出身。小学生から中学生にかけて、空想の中に生まれた12人の少女と金魚をテーマに、アクリルガッシュで絵画作品を制作し続けています。

大阪芸術大学在学中から多くの展示に出品し、卒業後もグループ展を中心に多数展示を行っており、今回が1年ぶり3回目の個展となります。

展示のテーマは「One Of Many = 多のひとつ」自分は特別ではなく、多くの人の中に埋もれている存在。

そんな孤独感と「多のひとつ」という思考に悩みを抱えていたが、人は誰しも同じような気持ちで孤独を感じているのではないか。誰かに必要とされたいと、思っているのではないか。

そう気づいたとき、人間はひとつの仲間であり孤独ではないと思えた。「私達は全然特別でないかもしれないけど、それでも大丈夫、孤独じゃない」という氏の原点ともなるメッセージが込められています。

展示のようす

「One of Many」

展示名となった新作品。
黒い金魚は多数の中の一匹を表しています。

「慈愛」

描かれる12人の少女たちは16-17歳をイメージされています。
氏の中には元々一人の少女がいて、小学校高学年の時に一気に数が増え、
中学生の頃に現在の12人がほぼ確定されたそうです。

少女たちを描き始めたのも当時からで、
それによって髪形や顔のパーツなど、詳細までイメージができあがりました。
キャンバスに彼女たちが描かれてくると「会いに来てくれた」という感動があるそうです。

「かわいい」

しっとりとした質感のある髪は、
部位ごとに奥から順番に描かれています。

「I was born」

漂う金魚は、心の内側から表に出てきた感情を表しています。
感情は耳や頬など部分的な場所に現れるため、そこから金魚が飛び出してくるように描かれています。
図鑑などを参考に、ヒレの数やウロコの一枚一枚、
薄く浮き出た血管に至るまで、非常に精緻に描かれています。

「会いたい」

 

「eye」

 

「K」

鑑賞をおえて

「孤独ではない」というテーマの通り、どの作品の人物も生き生きと描かれていて、まぶしいほどの力強さを感じました。どこか幼ささえ漂う澄んだ表情には、ひとりではないという温かさや、ありのままでいいという優しさが込められているようでした。彼女たちは、元々は作家の心の中にいる空想の人物です。幼いころ、自分だけの空想の友達を持つことは決して珍しいことではないと思います。

しかしそれが残り続け、これほどまでに瑞々しく表現されている。ふんわりとした質感と光沢をまとう、現実を凌駕するような美しい髪。細部まで描きこまれた、今にもキャンバスから飛び出してきそうな金魚。透き通るような肌は、作品を前にすると息遣いや鼓動さえ聞こえてきそう。

そんな途方もない存在感に、大きな衝撃を受けました。自分を安心して見つめ返したくなるような、そんな前向きな気持ちを運んできてくれる展示でした。

展示情報

展示名:One Of Many
作家:坂ノ咲由平(ウェブサイトtwitter
期間:2017年9月12日(火)~17日(日)

展示場所:アートコンプレックスセンター
最寄り駅:信濃町駅
所在地:〒160-0015 東京都新宿区大京町12−9