展示レポート
小山佳菜子「I am」
展示のようす
腱鞘炎を患い、左手で描いたという作品。
闇に浮かび上がるような色彩、物悲しげな表情が不安な気持ちを表しているようです。
解説・鑑賞後記
2017年12月に開催された、小山佳菜子 氏の個展「I am」です。氏は学生の頃より絵を描き続けており、大学では映像・アニメーション・絵本など様々な制作を行っていました。卒業後、2014年頃から画家として活動を始め、東京・愛知など各地で展示活動を行っています。
氏はパステル・アクリル絵画を用いて「大人になれない子ども」をモチーフに作品を制作しています。氏は作品の人物に名前をつけることが多く、それは制作の前や制作中に行われることもあるそうです。
今回の展示では、外国の名前をつけられた子どもたちが描かれました。作品下の()は、名前:その意味、となっています。外国の名前は神話や古代の言葉など様々な意味を持っています。
描かれた子どもたちの自己紹介、そして作品を発表するという作家自身の自己紹介。展示タイトル「I am」にはそのような2つの意味が込められています。
穏やかな色彩で綿毛のように描かれる子どもたち。大きくきらきらと輝く目は宇宙を宿しているようで、混じり気のない純真さ、豊かな感受性を思わせます。ふっくらとした頬、健康そうに色づいた肌は、作品の前に立つだけで穏やかな気持ちを運んでくるようです。
明るく、時に暗く、ふわふわと浮遊するように描かれる植物たちは、子どもたちの様々な感情を映しているかのようです。大人たちがときめきを忘れてしまった、日常のあらゆるものに心動かされる。そんな子どもたちの一瞬を繊細に切り取ったかのような、踏み入ることのできない世界が美しく表現されています。
氏は創作を続ける中で子どもに魅力を感じ、子どもをモチーフにした絵を描くようになりました。最初に名前を考え、それに性格などを肉付けして絵におこしてく、ことが多いそうです。しかし性別や年齢にこだわりはなく、鑑賞者が自由にとらえて構わないと話します。
下記の2作品は他の作品より以前に描かれたものです。目が小さく白目が見えないように描かれています。活動を行うにつれて徐々に目を大きく、より印象的に描くようになりました。

左「赤い花咲く庭」 右「まいまいつぶら」(部分)
異国の絵本を覗くような独特の世界観。しかし子どもたちの真っ直ぐな視線からは、様々なものに興味をいだき、憧れたり怖れたりしていた幼いころを思い出すようです。気持ちを惹かれるままに駆け回っていたあの頃を思わず振り返ってしまうような、素敵な展示でした。
展示情報
展示名:I am
作家:小山佳菜子(オヤマカナコ)|ウェブサイト・Twitter・Instagram・Facebook
期間:2017年12月25日(月)~12月27日(水)
展示場所:ギャラリーアートポイント(中央区銀座)
最寄り駅:新橋
所在地:東京都中央区銀座8-11-13 エリザベスビルB1