展示レポート
奥田拓郎・永島信也・森栄二 三人展 ― 像 ―
展示のようす
解説・鑑賞後記
2017年12月に開催された、奥田拓郎氏(人形作家)、永島信也氏(現代根付・木彫フィギュア)、森栄二氏(彫刻)、3氏によるグループ展です。
人の像を手がける、ジャンルの異なる3人の作家たち。本展では彼らの作品を一堂に並べることで、作品に接点が生まれ、鑑賞者・作家に発見をもたらすことが、目的の一つになっています。
奥田拓郎(オクダタクロウ)氏は1991年生まれ、京都造形藝術大学を卒業し独学で人形制作を行っています。ウェブサイトでは作品のほか、人形の制作手順などが丁寧にまとめられているため、興味のある方はぜひご覧ください。
1枚めの作品は、奥田氏が全身をつくった最初の人形で、ツノは木で作られています。彼女には「森のなかで創造と破壊を繰り返しながら生きている」というストーリーがあります。指先が土色に染められているのはそのためで、ツノは抜けてはまた生えるという再生を象徴しています。
褪せたような柔らかい色を放つ服装は、森の奥深くに溶け込むよう。布で作られた髪が縁取る、遠くを見据えるような眼差しには、時代も国も違う異世界の物語を覗き見るような、不思議な雰囲気が宿っています。
奥田氏は造形に型を用いていません。そして世界観を演出するため、塗料やサビなど様々な素材を使って彩色を行っています。そのため、製作時期によって表情や肌の色が異なります。
オリジナリティを追求するため、独学で制作を行っていると話す奥田氏。そんな氏の想いを感じさせる、物語性に引き込まれるような作品たちでした。
永島信也(ナガシマシンヤ)氏は1986年生まれ、京都造形芸術大学を卒業し、2009年頃から動画サイトに木彫フィギュア作品を発表することで作家活動をはじめました。同年から年に1度のペースで個展を行い、手のひらサイズを意識して木彫作品・根付彫刻を制作しています。
永島氏の彫刻作品は、どれも手のひらにすっぽりと収まってしまうような小さなものです。しかし、息を呑むような精巧な造形は元の素材を忘れさせるようで、近くで見るほどサイズを軽々と凌駕するような存在感を覚えます。
なびくような髪、やわらかそうな肌の質感、飛び立つような躍動感、マンガやアニメなどで目にする現代的なキャラクターと伝統技術が組み合わさることで、他にはない洗練された魅力が現れます。
永島氏は大学時代に顔を造形する面白さに気づき、アニメやマンガなど2次元世界のキャラクターを理想として、現在のスタイルで制作を始めました。そのため、顔や手の造形には非常に気を使っていると話します。
目には岩絵具やガラスが埋め込まれています。また素材の質感を活かすために色はあまり塗らず、肌をリアルに再現するために表面を磨きすぎないようにしているそうです。既存の美少女フィギュアには見られない、独特の質感・光沢を放つ彼女たちは、現代根付という江戸時代から続く文化の先端にいるのです。
森栄二(モリエイジ)氏は1995年に東京藝術大学大学院保存修復技術彫刻専攻を修了し、90年代から展示活動を行っています。子供や植物をモチーフにした、木彫り彫刻や粘土像などを制作しています。
森氏の作品は、瓦礫の中からたった今外の光を浴びたかのような、どこか退廃的な雰囲気が漂います。石塑粘土の質感が荒々しく残る表面。しかし唇のふっくらとした造形、頬の繊細な曲線は、思わず触れてしまいそうなほどリアルさがあります。
足元を見下ろすような目元、物思いにふけるような表情は、どこか寂しそうにも見えます。しかし、無邪気な子供が笑顔の後に見せる一瞬の表情、様々な感情の狭間に存在する自然体の姿を、正確に捉えているようにも感じます。
時間が停止したかのような、言いようのない雰囲気。作品と対峙するにおいて言葉などは不要であり、目に映るまま、存在するままに感じ取ってくれればいい。そんなことを気づかせてくれるような、不思議な安心感を覚える作品でした。
展示情報
展示名:奥田拓郎・永島信也・森栄二 三人展 ― 像 ―
作家:
奥田拓郎(オクダタクロウ)|ウェブサイト・Facebook・Twitter・Tumblr
永島信也(ナガシマシンヤ)|Twitter・Facebook
森栄二(モリエイジ)|略歴
期間:2017年12月9日(土)~12月17日(日)
展示場所:Gallery花影抄(東京都文京区)
最寄り駅:根津
所在地:113 – 0031 東京都文京区根津 1-1-14 らーいん根津202