1. HOME
  2. 展示レポート
  3. 集治千晶 個展「Hybrid of the Girl’s Icons」

展示レポート

集治千晶 個展「Hybrid of the Girl’s Icons」

2018年10月に不忍画廊で開催された、集治千晶 氏の個展「Hybrid of the Girl’s Icons」のレポートです。
集治氏は1973年京都生まれ。98年に京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻版画を修了し、同年 大阪の番画廊で個展を開催。以降東京・京都・大阪などで数多く展示活動を行っています。
銅版画・水彩・モノタイプなど様々な技法を用いて、踊るような美しい線と鮮やかな色彩で絵画やアクセサリーを制作しています。
本展ではそれらの作品のほか、近年新たに取り入れられた人形作品など50点ほどが展示されました。

展示のようす

▲「メリーゴーランド」
軽快な音楽とともに、まばゆい光を放ちながら回転する。
そんなメリーゴーランドの綺羅びやかな印象を、平面に閉じ込めたかのような作品です。

▲「人形部屋」
軽やかで自由な雰囲気をまとう曲線は、まるでリズムを奏でるかのよう。
雑多で賑やかな雰囲気からは、住人の「可愛いものにだけ囲まれていたい」という、素直で奔放な想いが伝わってくるかのようです。

▲「ハートにリボン」
展示タイトルは「少女アイコンの複合」を意味します。
その名の通り、集治氏の作品はフリル・レース・リボン・宝石など、少女らしい様々な要素が組み合わさっています。

▲「Hybrid of the Girl’s Icons ―Flying Eyes―」
深い海のような色彩で真っ直ぐに見つめる瞳。
それを縁取るような大胆な色使いに、鑑賞するたびに異なる印象を突きつけられます。

▲一角が人形スペースとなっており、大小それぞれが並んで展示されていました。

▲集治氏は、私生活が落ち着いた2年ほど前から人形制作を始めたと話します。
手足は石塑粘土で作られており、箱型の胴体には宝石やスイーツを思わせるクリームデコレーションなど「かわいい」物が詰め込まれています。

集治氏は幼い頃、好きなものを宝箱に詰めて大切にしていたそうです。
また「祭壇」を好み、それらのイメージが人形と結びついた結果、胴体が箱となったのです。

▲手足は人形らしさを残すために塗装していません。
しかしマニキュア・ペディキュアを施すことにより、ここにもやはり「かわいい」が取り入れられています。

▲小型の人形作品です。背中から伸びるカラフルな繊維は、ヘアーエクステンションのイメージが込められています。
「かわいい」という憧れがそのまま姿を得たかのような、過剰なほどの装飾にも関わらず、ひとつの作品として破綻せずに存在していることに驚かされます。

▲人形作品には、ネイティブアメリカンが信仰のもとに制作する「カチーナドール」の要素も組み込まれています。
海外を旅した際に彼らの文化に触れ、その体験が組み込まれているそうです。

▲「Heart beat ―Swaying―」

▲壁一面にたくさんの小品が並びます。
それぞれ受ける印象が異なり、次から次へと場面が移り変わる夢のような錯覚を覚えます。

▲「ペチコート・ステップ」


集治氏の作品はあらゆる質感・素材が、特有の色彩と曲線によって全く違和感なく作品として組み合わさっています。一つ一つを切り分けていけばそれらは見知った物であるにも関わらず、まるで心象世界に足を踏み入れるような不思議な感覚に包まれます。

集治氏は「アートは普遍的なもの。人を人たらしめているものがアートなのではないか」と話します。ファッションや装飾などは、生存のために必須なものではありません。しかしそれらに憧れを抱き、追い求めずにはいられないのが人間であると考えると、人とアートの関係は他の何よりも密接なのかもしれません。

集治氏は今後、人形など、さらにサブカルチャーとアートの間を突き詰めていきたい、と考えているそうです。
特定のものにこだわることなく、あらゆる要素が作品に落とし込まれていく中で、一体どんな世界が次に生みだされるのか、楽しみでなりません。

展示情報

タイトル:「Hybrid of the Girl’s Icons」
作家:集治千晶|WebFacebookInstagram
期間:2018年10月9日 (火) ~10月27日 (土)

展示場所:不忍画廊
所在地:東京都中央区日本橋3丁目8−6 4F

最新レポート