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展示レポート

池田俊彦 個展 | 笑う黄金種族

2017年10月に開催された、銅版画家・池田俊彦氏の個展「笑う黄金種族」です。氏は2003年に多摩美術大学を卒業し、以降積極的に作品発表を重ね、不忍画廊では10年近く前から展示を行っています。幼いころから人間の存在や生と死に興味を抱き続けてきた氏が、銅版画を用いて描くのは、死を拒絶し何万年、何億年と膨大な時を生きた人間の姿です。

時間や空間さえ超越し、恐ろし気な怪物のように目に映る彼らは、肉眼ではとらえきれない、信じられないほどの微細な点によって描かれています。その人間の限界に挑むような手法ゆえ、大型作品の制作には1年以上の期間を要します。

なぜそこまでして銅版画に点描という手段を選ぶのか。それは白黒の世界に憧れた氏の「究極の黒を作りたい」という強い想いからです。

銅板にうがった点にインクを詰めて刷り上げると、インクが盛り上がり物質化します。この物質化した黒こそ、銅版画でしか生まれえない表現なのです。またルーペを通してうがたれる点は、線では描き表せない独特の濃淡を生み出します。

氏の徹底した世界観への憧れと驚愕するほどの技術が、気が遠くなるような時を経て作品を創造しているのです。

展示のようす

「Smiling Golden Race -騎士と死と悪魔-(連作)」

 

「笑う老王・美しい黒い角・」

1000 × 700㎜に及ぶ大型作品。このサイズの銅版画エッチング作品になると、制作に1年~1年半ほどの期間を要します。

 

「The second new human race」

線のような連なり、もしくはぼんやりと霞んでいるように見える箇所も、すべて点によって描かれています。
顔を近づけ、目を凝らしてもとらえきれない微細な描写は、会場に置かれているルーペを用いることによって、ようやく細部まで認識できます。
写真ではあまりに情報が少ないため、ぜひ会場で作品を間近で見て、その魅力を実感して頂きたいです。

 

「The first new human race」

 

「The third new human race」

 

「笑う老女王・混沌に角を生やす・」

 

「老猫 f.s.」

 

「美しい角のための習作 Ⅱ」

 

本展示に合わせて出版されたブックレットです。限定250部、500円(税別)です。
作家自身がレイアウト等のデザインを行っており、会場ではサイン入りを購入できます。

鑑賞後記

作品を前に十分な時間をかけて細部まで鑑賞した後、ルーペを手に顔を近づけた僕は息をのみました。拡大されて写った彼らの姿は、その密度と描写の精密さを全く落とすことなく、それどころかより一層、立体的にありありと目の前に迫ってきたからです。盛り上がったインクがもたらす、質量を伴った神々しいまでの黒。終わりなく続いていると錯覚させるような点の連なりは、果てしない時を生きた彼らの皺、細胞の一つ一つに至るまでを再現しているかのようです。

作品上に描かれているのはひとりの人物、あるいは動物にも関わらず、途方もない時間と、その背後に広がる無限の空間さえ感じさせるようで、一度の鑑賞ではとてもとらえきれないほど、濃密な世界観が詰まっています。

宇宙の終焉に同席し、虚無の世界で微笑み続ける彼らは何を想うのか。微笑みが止む時はくるのか。息遣い、鼓動、揺らぐ皮膚の気配。そして絶対零度の極寒にさえ晒されそうなほどの圧倒的な存在感が、永遠を生きる彼ら同様、終わることのない無限の想像をもたらします。

僕自身の技術の問題もありますが、写真では原画の魅力を伝えきることは不可能です。興味を惹かれた方は、ぜひ画廊で作品を直で見てください。

作家在廊日は下記なっておりますので、予定の合う方は時間に余裕をもって向かうのをお勧めします。在廊日:10月3日(火)4日(水)6日(金)7日(土)10日(火)11日(水)13日(金)17日(火)18日(水)20日(金)22日(日)※午後14時ごろ~

ブックレットは下記、不忍画廊ショップページからお買い求めいただけます。
http://shinobazu.com/eshop/products/detail.php?product_id=180

展示情報

展示名:笑う黄金種族
作家:池田俊彦(ギャラリー作家紹介
期間:2017年10月3日(火)〜22日(日)11:00~18:30
休廊:月・祝日

展示場所:不忍画廊
最寄り駅:東京駅、都営浅草線 日本橋駅
所在地:東京都中央区日本橋3-8-6 第二中央ビル4F