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展示レポート

但馬敦 個展「但馬敦 展」

2018年3月に開催された、但馬敦 氏の金属工芸展「但馬敦 展」のレポートです。

但馬氏は1994年香川県生まれ。2015年頃から展示活動を多数行い、現在は広島市立大学大学院に在学しており、広島県で制作を行ってます。

本展は但馬氏の初個展になります。様々な動物の言い伝えや花言葉などをコンセプトに制作しているという但馬氏。ポップな色合いを放つ動物、酒器、植物をモチーフとしたアクセサリーなど約20点が展示されます。

展示のようす

「Happy-Delivery」

▲皮膚、毛皮の質感、指先まで繊細に造形された姿は今にも動き出しそうなほどです。素材は、銀、銅、真鍮などで鮮やかな花々もすべて金属で作られています。金属と薬品を反応させることで、酸化によって様々な色を表現しているのです。

「幸せを呼ぶハリネズミ」

▲うずくまるような姿を見せる、かわいらしいハリネズミ。但馬氏は元々は食器を主に制作していましたが、金属の硬い・冷たい、という印象を払拭したく、無機物とは対照的な動物を作るようになりました。

鮮やかな色合い、温かさ、柔らかそうな質感など、金属とは正反対のイメージを与えたかったと但馬氏は話します。

「Strongest and weakest」

▲鮮烈な赤色を放ち、尻尾をたらしながら堂々と佇むこちらの作品は、センザンコウがモチーフになっています。センザンコウはインド・中国・東南アジアなどに広く生息していますが、ウロコは漢方薬になり、肉や皮革も高値で取引されるため、密漁が相次ぎ絶滅危惧種になっています。

作品のウロコは合計350枚あります。ひとつひとつ銅板をカットし叩いて成型されており、気が遠くなるような制作だったそうです。

「Strongest and weakest」

 

「ぐい呑み 3」

▲こちらの酒器は、金属の伸びる性質を利用し1枚の銅板から叩いて成形されています。内側には錫が塗布されており、洗練された光沢を放っています。但馬氏は叩いて造形することが、非常に好きだと話します。

▲さくらをモチーフにしたアクセサリー。柔らかなさくら色を映しながら、ひらひらと風に舞うような風情を感じます。他の作品と同じように銀の板をカットし、微細な線を描いて造形しています。

今にも歩きだしそうな動物たちは、金属製であることを忘れさせ体温さえ感じさせるようでした。作品を前にすると、まず鮮やかな色彩に目を奪われます。しかしより近づいて鑑賞すると、花弁のいちまい、指先にいたるまで実に細かに造形されており、そんな途方もない技術が活き活きとした質感を表現しているのだと感じました。

金属ならではの深みのある色合い、美しい光沢。素材の魅力を深く引き出しながら、しかし既存の金属の印象を払拭する。そんな新鮮な気持ちを呼び起こすような素晴らしい展覧会でした。

展示情報

展示名:但馬敦 展
作家:但馬敦(タジマアツシ)|Facebook
期間:2018年3月23日(金)~4月6日(金)

展示場所:REIJINSHA GALLERY|WebTwitter
所在地:東京都中央区銀座6-7-2 みつわビルB1

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