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展示レポート

山口愛美 個展|― X × 3mmの世界 ―

展示のようす

「あの子とこの子」

 

「Mr.M」

 

「午前3時のサブタの海」

 

「微睡」

 

「君の居た場所」

 

「揺籠」

 

「トラム海域の底」

 

「恋の行方」

 

「僕のお姫様」

 

「君と僕の世界で」

 

解説・鑑賞後記

2017年11月に開催された、山口愛美 氏の個展「― X × 3mmの世界 ―」です。氏は鉛筆を用いて様々な生き物たちを描き続け、石粉粘土でサンゴや魚などの立体物を制作しています。

シルバーシェルでは2012年から年に1度のペースで個展を開催しています。モノクロであることを忘れさせるような緻密な描写は、湿り気を帯びた光沢、ふさふさとした繊維の集合、硬質な岩肌など生き物特有の質感を表現しています。

夜が降りてきたかのような、深淵を感じさせる黒い背景。風のゆらぎ、またはかすかな水流を感じさせるような、繊細なグラデーションと陰影表現は、ガラス越しに実在する世界と向き合っているかのような、臨場感があります。

身を委ねるようになびく、または太陽光を求めるように伸びる植物たち。気まぐれにやってきて、次の目的地を探しているような生き物たち。そして彼らが近寄るのを物言わず受け入れる、大地のようなサンゴ・石たち。

生き生きとした絵画の中には、文明人が遠い過去に置き忘れてしまった、生命本来の姿が描かれているように思います。そしてそのように生々しく目に映る一方、硬質にも見えるモダンな質感は洗練された印象をもたらします。

圧倒的なリアリティと描写力を持って迫る作品たち。しかしそこには、ある種ファンタジーとも言えるような作家独特の空想・幻想的な表現が存在していると感じました。一見すると作風とは相反するようなこの印象はどこからやってくるのか。

氏は海中とも陸ともつかない、境界の曖昧な世界を描いていると話します。石が積み重なり、植物がゆったりと揺らめくような描写は海中のようでもあり、一方でカエルや蝶などが動き回る姿は陸のものです。

それらは自然界の景色を切り取ったようなリアリティを持ちながら、平面的に美しく重ねられています。堂々と鎮座する様子はまるで肖像画のよう。この自然と空想が融合した描写こそ、素晴らしい魅力の土台になっているのではないでしょうか。

氏はテーマ性にこだわるのではなく、自身が生き物を想う気持ちのままに描き続けていると話します。標本のような整然とした美しさを讃えながら、幻想的な絵本のような雰囲気を漂わせる。このあまりに独創的な作品世界は、純粋な想いで鉛筆を握る、氏のひたむきさが生み出しているのかもしれません。

絵画とともに展示されている立体作品も鉛筆によって色がつけられています。イモムシたちの上に居座るカエルは、まるで絵の中からたった今飛び出してきたようで、造形に対する高い技術を感じました。

氏はイモムシに触れるのは苦手だが、見るのは好きだと話します。今にも動き出しそうなリアルな造形とコミカルな様子は、絵画の魅力が余すところなく込められています。

絵画と彫刻。どちらも素晴らしく作り込まれているため、同じ人物が作ったとは信じられないほどです。しかしその一方で、氏でなければ次元を超えてこれほど正確に作品世界を再現することは不可能なのだろう、とも感じました。

海と陸、空想と幻想の狭間を行き来する。そんな冒険心をくすぐられるような展示でした。

展示情報

展示名:― X × 3mmの世界 ―
作家:山口愛美(ヤマグチアイミ)|Official WebTwitter
期間:2017年11月6日(月)~11月18日(土)

展示場所:SILVER SHELL(京橋)
最寄り駅:京橋
所在地:東京都中央区京橋2-10-10 KCビル1F